自営業は会社員と違って厚生年金がなく、将来の公的年金が弱くなります。
そのため、どうしても自営業者は将来、受け取れる年金も少なく生活に苦しむイメージがありますが、
本当に自営業の老後は悲惨なのでしょうか?
もちろん、何も考えず日々過ごすだけでは会社員も自営業者も将来に不安が残るのは同じです。
厚生年金が無い分、会社員より不利かもしれません。
しかし、自営業者は将来の必要資金を計算し、あらかじめ対策を立てることで自営業でもしっかりと老後対策を行うことができます。
逆に税金面で自営業者は会社員より打てる手が多くあります。
こちらの記事ではあなた(小規模自営業者)の老後の必要額を計算します。
自営業者の老後の年金対策についてはこちらの記事でまとめていますのでご確認ください。
自営業の老後はなぜ悲惨と言われるのか?
まず、国民であれば皆さん加入している国民年金
当然、自営業者でも加入は必須で、老後の生活資金を補ってくれる大切な制度です。
しかし、
国民年金という制度は「自営で生涯収入を上げ続けられる」という前提でその補助的な役割。
要は国民年金だけで生活するという概念はもともとありません。
そのため、国民年金収入だけではどうしても生活できず、老後の貧困につながります。
さて、
現在の国民年金の受取額は40年間きちんと納付し続けても年に77万9300円(17年度)
約6.5万円/月にしかなりません。
少しでも未納期間があればその分の受け取れる額はさらに減ることになり、
実際は、国民年金(老齢基礎年金)の平均支給額は、月額で「55,464円」になります。
引用: 厚生労働省「平成28年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」より
一方で、会社員は退職時に多くの企業では退職金が支給されます。
さらに、厚生年金が上乗せされ、国民年金、厚生年金とダブルで受け取れます。
仮に、会社員と同じだけ年金を受け取るようにするためには会社と従業員の折半で支払う厚生年金と違い全額ご自身で持ち出さなければならない分、
ある程度の売り上げ規模を誇る自営業者やフリーランスの方でないと簡単ではないことが解ります。
そういった公的年金制度の違いにより、会社員より老後準備を怠ると悲惨な状態になりやすくなります。
自営業の老後の必要資金額は?
統計データを元に自営業者の老後の生活にいくら必要なのか計算してみました。
単身世帯と2人以上の世帯でそれぞれ公的な統計によるデータとなります。
単身世帯
生涯をシングルで生きていく場合に必要な支出平均は政府の家計調査によると148,358円となります。
家計調査報告(家計収支編)―平成29年(2017年)平均速報結果の概要
35歳未満で161,623円なので、この計算でいくと老後であれ、年をとっても支出はそれほど変わらないということでしょうか。
この老後にかかる主な費用の内訳は、
項目 | 35歳未満 | 35-59歳 | 60歳以上 |
食費 | 3万9510円 | 4万5883円 | 3万6604円 |
住居費 | 2万9811円 | 2万5347円 | 1万5372円 |
光熱費 | 6959円 | 1万1191円 | 1万2928円 |
交通費・通信費 | 2万2848円 | 2万5156円 | 1万4370円 |
交際費 | 1万1780円 | 1万3558円 | 1万8232円 |
医療費 | 3627円 | 7046円 | 8167円 |
教養娯楽費 | 1万7155円 | 2万1089円 | 1万7546円 |
医療費などがやはり増えてくることが予想されます。
シングルの最低限の生活には最低15万円/月の生活費がかかると思ってもよいでしょう。
2人以上の世帯
2人以上の世帯での世帯主が65歳以上の高齢無職世帯の支出の平均は、247,701円となります。
「世帯主の年齢階級別家計支出(二人以上の世帯)-2017年-」(総務省統計局)
この2人以上世帯にかかる老後費用の内訳は、
項目 | 40歳未満 | 60~69歳 | 70歳以上 |
食費 | 6万3693円 | 7万6608円 | 6万8065円 |
住居費 | 2万3520円 | 1万6459円 | 1万4115円 |
光熱費 | 1万7847円 | 2万2693円 | 2万1191円 |
交通費・通信費 | 4万1491円 | 4万3448円 | 2万3998円 |
交際費 | 1万1504円 | 2万5541円 | 2万5264円 |
医療費 | 9949円 | 1万4603円 | 1万4850円 |
教養娯楽費 | 2万5790円 | 2万9366円 | 2万3162円 |
夫婦2人の最低限の生活には最低25万円/月の生活費がかかります。
シングルの場合で15万円、夫婦2人の場合で25万円がそれぞれ最低限かかります。
高齢者となり、月々の支出は若干現役世代よりかは減るものの、大きく減ることことはなく、やはりある程度の支出は避けられないことがわかります。
自営業者の老後必要金額を計算してみよう
それではあなた自身がどれだけ老後資金が必要なのか?
将来あなたがいくら必要か把握していないと、老後資金を貯めることができません。
将来あなたが必要になる老後資金のもっとも簡単な計算方法は、
現在の毎月の生活費 – 子供にかかっている費用 = 老後に必要な月額費用
子供にかかっている費用に含まれるのは、教育費を主として食費、子供の為の保険、子供のお小遣いなどになります。
子供が巣立てば必要のない費用となりますので、純粋に今の生活水準を維持したい場合はこの計算だけである程度は割り出せます。
参考として一般的に言われていることは、
夫婦2人の場合だと、外食を月に数回、年数回国内旅行を行くと計算した場合、35万円ほどかかるそうです。
これは持ち家か賃貸、ローン残高などにより変わってくると思いますが、毎月35万円は結構贅沢なイメージがあるのですが、いかがでしょうか?
ではここで簡易的なシミュレーション
子供にかかっている費用を引いた生活費が25万円/月だとしましょう。
あなたは、老後は今の生活水準にプラス2万円の余裕を持ちたいと考えます。
27万円/月 × 12か月 = 324万円/年
この計算の上、65歳から80歳まで生きた場合は、
324万円 × 15年 = 4860万円
聞いただけで気が遠くなりそうな数字ではありますが、この金額を全て老後までに貯めなければいけないということはありません。
ここから公的に支給される金額を差し引いた残りをあなたは老後までに貯める必要があります。
先ほどご紹介した国民年金が約6.5万円 × 2人(夫婦) = 13万円
(正確な支給額を知りたい場合は年金定期便を確認してください。)
合計で2340万円が公的に支払われることになり、実質は2520万円用意すれば済みます。
より詳しく詳細を出して計画したい方はこちらの記事を参考にしてみてください。
自営業の節税と対策
自営業で老後資金をしっかりと貯めるためには節税と老後対策は必須です。
より詳しい各内容はこちらの記事で別途記載させていただきます。
自営業の節税
会社員と自営業の大きな違いはここにあります。
給与所得控除
2017年12月に閣議決定された所得税改革で、「基礎控除」と「給与所得控除」に関する変更です。
これは2020年1月から適用されます。
変更点として、基礎控除は38万円→48万円にUPすることにより個人事業主は減税となります。
青色申告(電子)
サラリーマンと異なり税金はすべてご自身で申請しなければなりません。
その際に青色申告で申請すると65万円の控除を受けられます。
また、電子申請を行うことであらなる減税メリットが得られます。
国民年金基金
国民年金の加入者(第1号被保険者)でしたら、だれでも加入でき、掛け金の全額が所得控除になります。
自営業者には税制上のメリットが大きい制度になります。
上限は月額6万8000円までで個人型確定拠出年金と合算になりますが、掛金すべてが減税になるのはかなり大きいです。
例えば、下記のような方は生涯にわたって基本月額年金2万円が年金に追加で受け取れるのです。
・30歳男性
・終身年金A型
・掛け金は9740円
iDeCo(個人型確定拠出年金)
自営業でも使える確定拠出年金制度の個人型
仕組みは企業で導入しているものと同じで、自分で運用する金融商品を選び、その運用実績で将来受け取る年金が変動するというものです。
この将来の運用益もさることながら、最大のメリットは掛金が所得控除されて節税が可能なことにあります。
さらに、運用期間中に得た収益は非課税、年金で受け取る場合は公的年金等控除が、給付金を一括で受け取る場合は退職所得控除が受けられるます。
自営業の老後対策方法
老後の資金を確保するための方法になります。
固定費の見直し
老後生活に当たり、今まで気にしていなかった固定費の見直しは必須です。
賃貸費用、保険、光熱費の上限など見直しをすれば必ず無駄になっているところがありますので、必ず確認しましょう。
例えば、
住居費:夫婦2人で都心部や間取りは無駄になっていませんか?
保険:無駄な掛金や保証はありませんか?
光熱費:夫婦2人では契約アンペアが高すぎるなどの基本料の見直し
定年後も働く
サラリーマンが定年としている60歳以降でも個人事業主であれば働くことができます。
まだまだ60歳であれば身体が元気な方も多いです。
また、管理のみ自分で、人を雇えばあまり無理せず事業を続けることができます。
国民年金をしっかり納める
国の年金不信から、国民年金を納付していない人もいるようですが、
これはもっともやつてはいけない行為です。
老齢年金は今後、受給開始年齢の引き上げや、支給額の減額は起こり得る可能性はありますが、
年金支給自体は決して無くならないと考えられます。
無くなるのは国の崩壊と同じくらいの確率だと考えてください。
このような低い確率のためだけに、生きている限り一生涯受給することのできる年金を放棄するのは悪手。
例えば、2018年の国民年金保険料月額(16,340円)を40年支払ったとします。
このまま月の保険料が変わらなかったと仮定した場合、支払総額(7,843,200円)
対して、65歳からの支給額は77万9300円(年)、10年で支払い総額を給付金が上回ります。
平均寿命が伸びている現在では、年金は老後の長生きをカバーするために最適な商品となります。
国民年金基金を利用する
少しの掛け金で将来の年金を増やすことのできる国民年金基金
サラリーマンでゆうところの、2階建て部分、厚生年金にあたります。
掛金は税金控除の対象にもなりますので、かけることをお勧めいたします。
国民年金付加年金
通常の国民年金保険料に毎月400円の付加金を上乗せして支払う「国民年金付加年金」
上乗せされる年金額は「加入した月数×200円」
65歳から一生涯受け取れます。
例えば、
1年加入した場合、掛け金は4800円で受取額は年2400円。
つまりは、2年で元が取れる計算になり、これもオトクな制度になります。
低解約返戻金型終身保険
民間保険商品の一つ
保険料を支払っている期間中に解約する場合、返戻金(戻るお金)が低くなってしまう代わりに、
毎月の支払う保険料を割安にした生命保険(死亡保険)商品になります。
通常の終身保険よりは保険料が安いかわりに、保険料の払込を終える前に解約すると、戻る金額が元本のおよそ7割くらいに減額されます。
ただし、保険料の払込が満了した後に解約すると、お金がたくさん戻ることになります。
将来の備えとして考えれば一つ選択肢として上げられる商品です。
個人年金保険
こちらも民間保険商品の一つ
個人年金保険の大きなメリットに、貯蓄が苦手な人でも積み立てられること。
老後のためにお金を貯めたい方は強制的に運用することができます。
また、「個人年金保険料控除」が受けられるのもメリットの一つ。
個人年金のための保険料を所得税と住民税の課税対象となる所得から差し引くことで節税することができます。
しかも生命保険料控除とは別枠になるのも大きいです。
小規模共済に加入する
小規模共済とは、自営業者などの将来のための積立制度
いわゆるこれは自営業者などのための退職金制度です。
掛金は、毎月1,000円~70,000円までの間で選ぶことができ、全額所得控除の対象となります。
最大で掛金を掛けた場合、収入から年間最大70,000円×12カ月=840,000円を引くことができます。
将来の受け取り時には、退職所得扱いとすることが可能で、勤続年数に応じた以下のような大きな税金控除が利用できます。
経営セーフティー保険
経営セーフティー保険(倒産防止共済)は本来「取引先が倒産した時の連鎖倒産を防ぐための保険」であり、
取引先が倒産した時に掛け金の10倍までの融資を受けることができる制度ですが、経営者や自営業者の退職金作りとしても利用できます。
掛け金は全額経費とすることができます。
最大では月20万円(年240万円)までの掛け金を入れることが可能。
また、経営セーフティー保険の場合、この健康保険料を使えば保険料の節約にもつながります。
投資をしっかり行う
先ほどご紹介した国が用意している様々な制度を活用ながら、他の余剰資金を
堅実な投資を行いながら、老後の備えにしていくことは非常に大切です。
FXや投資信託、株式投資やファンドへの運用など様々あると思います。
しかし、投資は素人だからと銀行の相談窓口に相談するのは間違いです。
あそこはあなたにとって良い商品ではなく、銀行側にとって利益があがる商品の紹介しかされません。
しっかりと投資先を見極めたうえで、運用を行いましょう。
自営業の老後まとめ
会社員とは異なり、ご自身で商売をされているあなたのような、バイタリティーあふれる自営業者が老後も豊かに過ごすために、必要な情報取得や、対策、目標設定をしっかり行いましょう。
老後のためにしっかり稼いで、計画的に貯蓄することがあなた自身や家族を守ることなのです。
「老後に回す余裕がない…」と頑張っている方はしっかりと今のビジネスで稼ぎを出すことが必要です。
余談ではありますが、私の本業であるマーケティングを学び、しっかりご自身の商品を販売し、収益をあげることが必要です。
自営業者や中小企業が強い日本。
老後の安定をめざしながら、ぜひ、一緒に盛り上げていきましょう。